EUDR(EU森林破壊防止規則)でコーヒー農家が混乱。
2025.11.26
DAILY COFFEE NEWS
EUDRってなに?地球のルール作り
EUDRは、ヨーロッパ連合(EU)が作った「地球の森を守るための新しいルール」です。
対象となるのは、コーヒーやカカオ、牛肉、木材など、私たちが毎日使うものに使われる原材料です。
ルールはとってもシンプルです。
「2020年12月31日より後に、森を壊した土地で作られたものは、EUの国々で売っちゃダメ!」
EUは、「私たちの消費が原因で、世界の森が減るのはイヤだ」と考えて、この厳しいルールを作りました。目的はすごく良いことですよね。
衛星写真のカン違いで現場はピンチ!
1. 「森の農家」が「森」と誤認される
コーヒーやカカオの農家さんの中には、アグロフォレストリーといって、大きな木々の木陰を利用して作物を育てる、環境に優しい方法で農業をしている人がたくさんいます。
でも、人工衛星のカメラが上空からその農園を見ると、どう見えるでしょうか?
→ 多くの木々に覆われていて、ただの「濃い森」に見えてしまうんです。
2. 間違ったデータが「高リスク」を生む
EUDRのルールでは、企業は「このコーヒーがどこで、どんな場所で作られたか」を正確に証明する義務があります。
もし、企業が農園の場所(地理座標)をEUの「リファレンスマップ(基準となる地図)」と照らし合わせたとき、地図がその場所を「森林」と誤って表示していたら大変です。
「地図が『森林』を示しているのに、そこで作物を作っている!これは森を壊した場所なんじゃないか?」と、企業は疑わざるを得なくなります。
企業は「疑わしい場所のコーヒーを買うと、EUのルール違反で罰金を払うかもしれない」と考えます。
その結果、「証明できない場所」、つまり「地図が間違っている場所」を『高リスク地域(危ない地域)』と見なして、調達を避けるようになります。
真面目に環境を守りながら農作物を育ててきた小規模な農家さんが、地図のカン違いという、自分ではどうしようもない理由で、収入源を失うピンチに追い込まれているのが今の混乱の正体です。
EUのやり方は「まずルール!後で修正」
迷走に見える例:電気自動車(EV)
EUは、「二酸化炭素を減らす!」という目標のために、EVへの切り替えを急いでいます。しかし、乗り換えが急激に進むと、
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- 使い終わった大量のバッテリーをどうするか?
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- リサイクル技術や施設がまだ追いついていない
という問題が大きくなっています。これは「問題を先送りしている」と批判される原因になり、「EUは迷走している」と感じられることがあります。
成功した例:電子機器と鉛
しかし、この「規制先行」が世界を変えた成功例もあります。
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- EUは昔、スマホやゲーム機などの電子機器に使う「鉛(有害な金属)」を「使っちゃダメ!」というRoHS指令というルールを作りました。
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- メーカーは当初「そんな技術は無理だ!」と大反対しました。
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- しかし、EUが期限を曲げなかったため、世界中の企業が強制的に新しい技術(鉛を使わないハンダなど)を開発しました。
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- その結果、今ではEU向けではない製品も含めて、世界中の電子機器が環境と人間に安全な設計に変わったのです。
制約(ルール)が、最初は混乱を生んでも、最終的にイノベーション(技術革新)を強制的に起こす力になった例です。
混乱の先に、より良い未来を
EUDRの混乱は、「環境を守るという良い目標」と「現場の現実」の間に大きなギャップがあるために起きています。
ただ、問題が出たときに「規制をいったん延期する」とか、「正確なデータを新しく作って提供する」という修正の柔軟さがあるのは良いことです。何もせず、森が壊されていくのを見ているよりははるかに良いアプローチと言えます。
私たちは、この大きなルールの変化が、真面目な農家さんを縛りつけるものではなく、「環境に優しい農家さんを正しく応援する仕組み」になることを願っています。そのためにも、研究者たちが提供し始めた「Sample Earth」のような正確なデータが、早くルールに反映されることが大切なのです。
